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2016年03月14日(月)
 自分が入っている保険会社の生保レディーから 「土曜日お時間ありますか?」 と訊かれた。 保険の何やかんやは平日に会社でできるので、休日に何の用だろうと思って 「どうだったかな……。 ちなみにどういうご用件で?」 と返してみた。
 すると 「私がお世話になっているお寺で○○○というのが行われるんですが、本当に心が穏やかになるのでご一緒にいかがかなーと思いまして」 ということだった。 その 「○○○」 というのは、言葉の響き的に、禅っぽいというか、なんかそんな感じだった。 そういえば先輩が 「座禅は結構いいよ。 気持ちが落ち着くよ」 と言っていた。 俺は翌日、はじめから空いていると分かりきっていた土曜の予定を、さもあらためて確認したように生保レディーに伝えた。
 具体的に何をするか、生保レディーから聞かないまま当日になった。 「座禅みたいなことやるのかなー」 とか、「ヒザの古傷は大丈夫かなー」 とか考えながら指定された場所に行くと、いつもみたいなタイトスカートの生保レディーが居た。 そういう恰好で大丈夫ならヒザに負担がかかるようなことも無いだろうと安心して、案内されるままに付いて歩いた。
 着いた場所は 「お寺」 と言ったその言葉からはかけ離れた近代的な建物だった。 というか完全にビルだ。 エレベーターで何階だかに移動して、大広間みたいなところに着く。 広間に入る前に、手にお焼香の葉っぱを細かくしたような物を付けるよう促される。
 入ると椅子がずらりと並んでいるので、そこに腰掛ける。 そこから先は、何がどうなっていたか。 みんなでお経を唱える中で身の置き所が無い感覚になっていたら 「何となくでも結構ですんで、ご一緒に」 とか言われて、むにゃむにゃお経を唱えて、大きなテレビ画面に映し出された信者の 「奇跡を賜りました」 体験を聞かされて、その場の雰囲気に逆らえず、ありがたいお言葉が書かれたカードを買って、そんな感じで日程を終えました。 うん、バキバキの新興宗教でした。
 帰りがけに 「いかがでしたか?」 とか訊かれて、正直に答えられるわけもなく 「いや、あの、そっすねぇ……、なかなかどうも……」 とかボカしていると、生保レディーから 「大丈夫ですよ。 今日すぐに入信していただかなくても、ここに来ただけで、功徳、積まれてますよ」 とのお言葉を賜りました。 わーい。
 いや、しかしそっちかー。 その角度から来るか。 まさか生保レディーがそっちを勧誘してくるとは。「万が一のときは 2000 万円をお受け取りいただけます。 しかも死後、幸せになれるのです」 ってことか。 やかましいわ。

2015年07月03日(金)
 就職活動をしていた頃の話だが、某社で他の就活生とグループディスカッションなるものをやらされた。 あるテーマについて5~6人で議論するというものだ。 テーマは 「過程と結果、より大切なのはどちらか?」 だった。
 そのとき俺は 「結果が大事」 という立場についた。 そして、俺が属すことになった 「結果が大事」 は多数派だった。 変わり者を気取りたい俺は少し残念な気もしたが、当然と言えば当然の状況だった。 「結果よりも過程が大事」 という考えは、言い訳を用意してから行動することにつながりかねないし、そういう気持ちで経験した過程には価値が無いと思うのは割と自然なことだと思う。
 そんな中で、どうしても言い負かせない 「過程が大事」 派の人物がいた。 確か、亜田間ワル男くん、とかそんな名前だった。 彼は一貫して 「俺ぁ過程の方が大事だと思ってんよ? わりぃけど」 というスタンスだった。 スーツはヨレッヨレでネクタイはベロンッベロンだった。
 チャンスだと思った。 なぜ結果の方が大事なのか、なぜ少なくとも結果の方が大事だという気持ちでいなければならないのか、それを彼に理解できるように俺が説明する。 これは効果的なアピールになるだろう。
 しかし、そんな目論見は一歩目で打ち砕かれることとなった。

俺 「まず、過程は結果のためにあるわけですよね?」
亜田間 「でもさぁ、それって逆に言えば結果は過程のためにあるってことっしょ?」

 一瞬思考が止まった。 彼は何を言っているのか。 「逆に言えば」 で始まる言い回しは何度も聞いたことがあるが、亜田間くんのは本当に逆に言っただけではないか。 それを許したら 「白いってことは、逆に言えば黒いってこと」 となるし、「日本ってことは、逆に言えばアルゼンチンってこと」 となってしまう。 彼は何を言っているのか。 俺は次に何を言えばいいのか。 そういえば彼はなぜタメ語なのか。 状況を飲み込むことができず、喉に言葉が詰まった。

 例えば俺が 「人間ならばヘソがある」 と言ったのに対して 「人間じゃなければヘソが無いのかよ!」 と返してきた人がいたとする。 それであれば 「AならばB、が成り立つからといって、AじゃないならBじゃない、というのが成り立つわけじゃありませんよ? 中学校の数学で習うはずですがねえ?」 と嫌味ったらしくメガネをくいくい動かしながら言える。
 だが、亜田間くんレベルの剛速球をぶちかまされたとき、そういうのは通用しない。 彼は 「逆に言えば」 と言って確かに逆に言った。 もう何を言い聞かせても状況が変わる気がしなかった。

俺 「……いや、あの、じゃあ、歌で考えてください。 心がこもっていれば下手でもいい、そういう気持ちで歌った歌に心がこもるかという――」
亜田間 「こもると思うよ? わりぃけど」

 自分なりに用意していた 「巧い言い回し」 を試してみたが、「まあそうなるわな」 という結果になった。 あの場で、彼は無敵だったのだ。
 率直に言って彼は頭が良いとは言えなかったが、それゆえに強かった。 思えば、大きなことを成し遂げるには、そういう強さが必要なのではないか。 突拍子も無いアイデアは、そこから生まれるのではないか。
 その後の彼がどうなったのか、もちろん俺は知らない。 でも、きっと彼のような人が 「ルールは破るためにある」 と言えるのではないかと思っている。

2015年07月02日(木)
 ひとつの仕事が終わるたびに、満足度調査という名目でお客さんにアンケートをお願いしている。 このアンケートがひどい。 質問項目を誰が作ったのかは知らないが、訊き方が下手すぎるのだ。

 ・品質はいかがでしたか?
 ・価格は妥当でしたか?

 このへんは、まだいい。

 ・内部設計はどうでしたか?
 ・じゃあ外部設計は?

 このあたりになると、もう質問する意味が分からない。

 ・納期にはご満足いただけましたか?

 納期に間に合ったかどうかはお客さんから聞かなくてもわかる。
 そういうひたすら鬱陶しい質問に延々と答えさせて、最後に 「また弊社のサービスをご利用になる可能性はございますか?」 とくる。 その質問に 「いいえ」 と答える意味は、ほとんど無い。 実際、今まで 「いいえ」 を見たことが無い。 だから参考にはならない。

 10年くらい前に 『質問力』 という本が少し話題になった。 iモードが登場した頃、ある企業が iモードの利用状況を調査するために行った手法がその本にあった。 それは利用者にメールでこう質問するというものだった。

 ・あなたは今どこにいますか?

 なんというスマートな質問! このアンケートは多くの返信が得られ、また回答内容も有意義なものだったらしい。
 うちの会社だったらどうか。 どうせ 「iモードのコンテンツにはご満足いただけましたか?」 とか 「1日に何時間くらい利用していますか?」 とかいった質問をダラダラ並べることになる。 面倒で返信する気になれない。 わずかに返ってきた回答も 「まあ満足」 とか 「どちらとも言えない」 ばかりで大した参考にならない。 そうに決まってる。 勝手に想像しておいて言うのもアレだが、どうしようもない無能さ。

 でも、ちょっと見回せば、うちの会社に限らずこういう無意味な質問は多い。 ホームランを打った選手に 「今のお気持ちは?」 「うれしいです」。 震災で友人を失った小学生に 「今どんな気持ち?」 「悲しいです」。 AV女優に 「おいしい?」 「おいひいえふ」。 何のための質問なのか。 虚しくないのか。

 せめてスマートに質問しようという姿勢くらいは見せてほしい。 最初は模倣からでいい。
「素晴らしいホームランでした」
「ありがとうございます」
「あなたは今どこにいますか?」
「最高のお客さんの熱い応援に包まれた大阪ドームのド真ん中です!」
 気の利いた選手なら、これくらい言ってくれるかもしれない。

 うちの会社のアンケートだとこうなる。
「品質にはご満足いただけましたか?」
「いいえ」
「あなたは今どこにいますか?」
「午前1時のサーバルームです。 理由は御社が納品したサーバが勝手に再起動を繰り返すからです」
 よし、逃げるぞ。

2015年06月13日(土)
「いやあ、やっちゃったなあ」
「どうした?」
「いや、外回り行ってきたんだけどさ」
「ああ」
「そこで俺、お客さんの名前をフルヤ様、って呼んでたんだよ」
「うん」
「そしたらその人が本当はフルタニさんでさ、俺ずーっと間違えて名前呼んでたの」
「あちゃー、それ一番やっちゃダメなやつだ」
「だって古い谷って書いてたら…… 一番?」
「え?」
「今お前、一番ダメって言った?」
「ん? ああ、一番やっちゃダメなやつだよね」
「一番なの?」
「……そりゃ、まあ、一番だよ」
「それよりやっちゃダメなことは無いってこと?」
「いや、それくらいダメっていう意味で……」
「例えばさ、お客さんをクソムシ様って呼ぶのと比べてどう? 同じくらいダメなの?」
「……同じくらいダメだよ」
「あ、マジで? じゃあお客さんに“死ね”って言うのとでは?」
「お前それ言うか?」
「言わないよ? でも一番っていうからには」
「同じくらいダメだ」
「あ、そう。 そんじゃお客さんにまたがってウンコもらすのとでは?」
「そんなあり得ない例え出すなよ!」
「いやあり得るだろ。 物理的に全然不可能じゃないし、実際に腹の調子が悪いときに俺の精神が錯乱しないとも言い切れない」
「どんな確率で起こる現象だよ!」
「わかった。 百歩譲って錯乱は無いものとしようぜ。 ウンコオンリー。 お客さんの前でウンコもらすのはどうだ? フルタニさんをフルヤさんって呼ぶのはこれと同じくらいダメか?」
「……同じくらいダメだ」
「強情だな。 じゃあ逆にウンコは無しにして錯乱オンリーにしよう。 お客さんに会った途端に脳みそがパラリラーっとなって手にしていたモーニングスターでドーン!」
「なんでモーニングスター持ってんだ」
「別に凶器は何でもいい。 じゃあそこに置いてあったガラス製の灰皿でガツーン! これは名前の読み間違いと違って完全に事件だぞ? なかなかの沙汰だぞ?」
「…………」
「灰皿でガツーンとした後に仰向けに倒れたフルタニさんの顔面にウンコぶりぶりぶりー!」
「ウンコは無しじゃなかったのか!」
「なにしろ錯乱してるわけだからな。 自分でも何をするか分かんないよ」
「……悪かったよ」
「あ? 何だって?」
「お客さんの名前を間違えるのは一番やっちゃダメなことじゃありませんでした。 一番って嘘ついてすみませんでした」
「分かればいい」
「くそ、屁理屈野郎が」
「屁理屈じゃないだろ。 だいたい“一番”なんて言葉を軽々しく使う方がどうかしてるよ。 そういうの最悪だぞ」
「はいはい俺が悪かっ…… 最悪?」

2015年06月12日(金)
 今日はね、上手に描こうなんて思わなくていいから、みんな、のびのびと自由にお絵かきしましょうねー。

 あれれ? ミキちゃんどうしたの? そんな端っこにちいさく描いて。 今日は、のびのび描いていいんだから、真ん中にでっかく描こうよ。
 ほらほらマサヒロ君も、そんなデッサンがどうとか、むつかしいことは考えなくていいから、もっと大らかな気持ちで描こうね。
 あ、こらこらユキオ君、下書きなんかしちゃダメだよ。 今日はね、上手な絵を描くんじゃなくて、のびのび描くんだから。
 サヤカちゃん、どうして絵に陰影なんか付けてるの? 先生そういうこと教えてないよね? なんで教えてないこと勝手にするの? 第一、陰影とか子供らしくないよね?
 あ! お前! なに絵の具混ぜて深い紫とか作ってんだ! そういうの教えてないっつってんだろ! だいたい子供なんだから原色バリバリで描くもんだろ! 子供らしく!
 っておいユキオ! 下書きすんなっつったろ! 殺すぞ!
 マサヒロはデッサン狂わせろ!

 のびのびと! 自由に描け!

2015年06月03日(水)
 笑点の夢を見た。 やけに鮮明に見えた夢だった。 笑点は好きなテレビ番組なので、まあそういうこともあるかもしれない。
 たいていの夢がそうであるように、その夢も現実と違う部分があった。 大喜利のとき、林家たい平がいるべき場所に知らないおじさんが座っていた。
 下膨れの輪郭に、白髪まじりのくるくるパーマで、太い眉毛は八の字になっている。 田舎のひょうきんなおじさんといった風情だった。
 出されたお題も回答も忘れてしまった。 ただ、そのおじさんが回答すると必ずスベっていたことは覚えている。 そのおじさんは、そのたびに座布団を取られるより早く、あるアクションを自主的に起こしていた。
 手動式の空気入れで自転車に空気を入れるような動きをしながらリズム良く、声を張って歌うのだった。
「やーまもと まーさゆき!
  ねーをー 上ーげるな!」
 前半の 「やまもとまさゆき」 は、おじさんの名前だろう。 スベった自分をおじさん自ら鼓舞しているのだ。 夢の中の俺は、その様がおかしくて、腹を抱えるほど笑っていた。

 目が覚めても夢の大部分を覚えていた。 そのことは珍しくない。 だけど今回の夢には珍しいことがあった。
 たいがい夢の中で面白いと思ったことは、目が覚めてみれば何が面白かったのか分からなくなる。 少なくとも俺の今までの経験ではそうだった。 今回、夢の中で俺が笑っていたことを思い出してみる。
「やーまもと まーさゆき!
  ねーをー 上ーげるな!」
 これは、どうだろう。 結構アリという気がする。 動きも良かった。 滑稽さと少しの悲哀が合わさって、何とも言えない味わいがあった。

 自分も使いたいと少し思った。 夢のおじさんの名前を自分の名前に置き換えてやってみる。 どうも間延びした感じになった。 よく分からないが、自分の苗字が2文字なのが良くないのかもしれない。
 それほど残念でもない。 自分の名前に置き換えて、仮にしっくりきたとしても、それをどこかで披露する度胸は無いのだ。 仕事で失敗したときにやったら長く語り継がれることになるかもしれないが、そんなこと望んでいない。

 ふと、ハンドルネームならどうだろうと考えてしまった。 試してみたら、悪くなかった。 座りが良いと言えばいいのか、使い物になる感じがした。 しかもその名前のときは、人前で大喜利をやったりもしている。 やろうと思えばやれる。
「やろうと思えばやれる」
 そう思うと急に怖くなってきた。 スベった直後にハイテンションで歌う。 夢のおじさんは凄い。 それはとても心臓の強さが試される行為だ。 俺はそんな強さを持ち合わせていない。
 でも、魔が差すということがある。 これから俺は人前でスベったときに変な気を起こさないように用心しなければならなくなった。 あんな夢を見たせいで。 あのおじさんのせいで。

2015年06月02日(火)
 充実していない。 平日は一応仕事をしているが、それは本当に 「一応している」 という状態だ。 何もせずに十分なお金が手に入るなら仕事は躊躇なく辞める。
 土日なんかほとんど起き上がることすらしない。 水を飲みに冷蔵庫に立つことさえ面倒くさい。 俺のスタンドが冷蔵庫から水を持ってきてくれればいいのに、と思う。 スタンドっていうのは漫画 『 ジョジョの奇妙な冒険 』 に出てくる超能力のことで、もちろん俺にそんなものは無い。 あったらいいなと思っただけで、実際には無い。
 寝転がりながらネットで調べたところ、スタンドというのは 「生命エネルギーが作り出すパワーある像」 ということだ。 エネルギーとかパワーとか、そんな言葉を見るとなんだか落ち着かない。
 一応、死んでるわけではないから俺も生命エネルギーというやつがあるのだろうけど、普通の人に比べれば、それはそれはお寒いもののはずだ。 何かの間違いで俺がスタンド能力を持ったとしても、きっと残念なスタンドなんだろう。 漫画に登場したとして、主人公と戦うことになったとして、2話でやっつけられるだろう。

「チクショ~ あの乾物屋ぁ~ 粒のそろってない豆なんか売りやがってよぉ~ 炊きあがりに! ムラが! できるだろうがッ!」
 こういう神経質キャラ描写は欠かせない。 こういったコマをもりもり間に挟まないと2話もたない。

 戦闘の途中で急に妙なことを言い出すのも外せない。
「水はたっぷり使う……。 強く押すのはダメだ……。 ひび割れの原因になるからな……。 浮いてきたら捨てる……」
「一体お前…… 何を言っている……?」

 たっぷり焦らしたところで俺のスタンド登場。
「俺のスタンドは! スデに行動を開始しているんだぜー!」
 ただならぬ気配に振り返る主人公。
 その視線の先に、小豆を洗っている俺のスタンド。

 あとはダラダラ過ごした俺の人生の走馬灯でページを埋めてもらえば、どうにか2話いけるんじゃないかな。